副業解禁によるビジネスチャンスに懐疑的な人に伝えたい3つのこと

「副業解禁は、企業にとっても大きなビジネスチャンスになる」

そう聞くと、「本当に?」と懐疑的に感じる方も多いのではないでしょうか。

副業を推進したい政府の思惑を感じて、ますます疑問に感じる人もいるようです。

結論からいえば、確かに副業解禁は、企業に好影響を与えます。

しかし知っておきたいのは、好影響の範囲は、“ビジネスチャンスを生み出す(攻め)”よりも、“ビジネスチャンスを失わない(守り)”の分野が大きい、という事実です。

本記事では、副業解禁によるビジネスチャンスに関して、知っておきたい3つのことをお伝えします。

その1:副業解禁はPOPであってPODではない

「もっとウチの社員たちに成長してほしい。

副業を解禁して、外の世界も体験してもらえれば、スキルアップするんじゃないか?」

そんな視点で副業解禁を検討しているのなら、自社の置かれている状況と時流を、読み誤っているかもしれません。

なぜなら、副業解禁は、自社の人材流出や採用力低下を防ぐという視点で、緊急的に需要が高まっているからです。

都内では3割を超える企業が副業OK

東京都が実施した「都内企業における兼業・副業に関する実態調査(2021年4月発表)」によれば、3割を超える企業が、従業員の兼業・副業を認めています。

▼ 3割を超える企業が従業員の兼業・副業を認めている

*1 引用)東京都「都内企業 兼業・副業に関する実態調査」
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2021/04/28/05.html

上図の調査期間は2020年8月〜10月ですが、割合は上昇していくことが予想されます。

副業を認める企業が過半数を占め、スタンダードとなるのも時間の問題でしょう。

副業を認めないことはリスクになり得る

マーケティングの分野では、商品が消費者から選ばれるために必要な要素を表す「POP/POD」という考え方があります。

POP(Point of Parity):同質化ポイント。その商品が購買検討の選択肢となるために最低限兼ね備えておくべき要素のこと。

POD(Point of Difference):差別化ポイント。競合他社の商品にはなく自社だけが持っていて、購買決定の決め手となり得る要素のこと。

採用市場に置き換えて考えれば、「副業OK」の勤務条件は、もはやPOD(差別化ポイント)ではなく、POP(同質化ポイント)になりつつあるといえます。

つまり、副業OKという条件を満たしていないがために、採用できない人材・流出する人材が多く発生するリスクがあるということ。

言い換えれば、副業を認めないことは、ビジネスチャンス損失の危険をはらんでいるのです。

その2:副業解禁でのシナジー効果は大きな視点で捉える必要がある

一方で、副業が本業にもたらす「シナジー効果(相乗効果)」を期待して副業制度を導入している企業も存在します。

どんな点に注意すべきでしょうか。

性急に結果を求めない気構えを

シナジー効果を期待する場合、性急に結果を求めない気構えで、長期的な観点を持つ必要があります。

なぜなら、副業によって従業員が成長する度合いも速度も、その成長が本業にもたらす影響も、従業員によって異なるからです。

そして、副業はあくまでも従業員のプライベードな活動として行われるべき、という本質も忘れてはなりません。

「会社の資本が拡大できれば良い」という考え方

ここで、中小企業庁「兼業・副業を通じた創業・新事業創出事例集(2017年)」に掲載されている、オイシックス株式会社のコメントをご紹介しましょう。

副業に直接的・短期的効果を求めては駄目
本業における具体的な効果については、今後の成果として期待しているが、直接的・短期的な効果を求めてしまうと兼業・副業にチャレンジしようとする従業員にとってマイナスとなる。

副業による従業員の成長=会社の資本の拡大
現状は従業員それぞれのスキルアップや人間的な成長、社外からの知見の受入を進め、会社としての仕事に関する資本が拡大できれば良い。

*2

直接的・短期的な効果を求めるよりも、会社全体を大きな視点で捉え、
「会社としての仕事に関する資本が拡大できれば良い」
としているスタンスは、参考になる方が多いのではないでしょうか。

副業のシナジー効果を考えるうえでは、大局的見地に立つことが大切といえます。

その3:副業人材の登用には大きなビジネスチャンスの可能性がある

ここまで、副業解禁で得られる効果として大きいのはリスク対処や機会損失の予防であり、シナジー効果も直接的には期待すべきでないことをお伝えしました。

しかし、大きなビジネスチャンスにつながりやすいポイントが、ひとつあります。

それは、自社の社員に対する副業解禁ではなく、他社の社員の副業先として、自社を解禁することです。

副業人材を登用するメリット

副業人材の登用には、さまざまなメリットがあります。

▼ 副業人材の登用によるメリット

・イノベーションの創造(社外の知見や技術の取り込み)
・エグゼクティブ・ハイクラス人材の活用(フルタイムの給与不要)
・年代・居住地域・勤務可能時間にとらわれない人材採用(フルタイムの勤務不要)
・副業経由の採用ルート確保(優秀な人材を正社員へスカウト)
・自社の社員の成長促進(新たな刺激、知識の吸収)

直接的・短期的な効果を求めるのであれば、優秀な社外の副業人材を社内に巻き込むことで、シナジー効果を生み出す戦略が、好適なケースは多いはずです。

副業人材登用の企業事例

副業人材の登用を積極的に進めている事例としては、2020年7月に「ギグパートナー」募集で話題となったヤフー株式会社があります。

2020年10月には、応募者4,500人以上から選出された10歳から80歳までの104名と業務開始したことを発表しました。

現役高校生から海外のクリエイターまで、年代も地域も経歴も、幅広い人材が集結しています。

▼ ギグパートナーの一例

・現役高校生(16歳)
・自動車メーカー勤務(25歳)
・製薬会社勤務(25歳)
・旅行会社勤務(31歳)
・中国ネット総フォロワー数650万人、クリエイター兼番組プロデューサー(34歳)
・芸人(40歳)
・現役医師(41歳)
・匿名掲示板「2ちゃんねる」開設者(43歳)
・主婦(44歳)
・フリーランス(元広告代理店勤務)(78歳)

*3

このようなニュースを目にするだけでも、ビジネスチャンス創出の可能性を実感できるのではないでしょうか。

自社でも副業人材を活用できるポイントがないか、検討してみると良いでしょう。

さいごに

最後に、筆者の個人的なエピソードをご紹介します。

現在はフリーランスとして活動していますが、正社員として企業に勤務していた時代は、副業として、社外のプロジェクトにもよく参加していました。

在籍していた企業は、2010年前半にはすでに副業OKの方針を打ち出しており、独立志向の強い、自律した社員が集合していました。

もし副業が解禁されていなければ、筆者が前職を退職する時期は、3〜4年は確実に早まっていたでしょう。

「他にもやりたいことがある。人生は一度きりだ。

でも、今の会社でも、まだやり残したことがある。

どっちも、やりたい!」

そんな気持ちを、二者択一の選択肢(=会社を辞める or 残る)ではなく、柔軟な姿勢で受け入れてくれた前職には、感謝の気持ちしかありません。

感謝の気持ちがあるからこそ、より貢献したいとモチベーションが高まり、成果につなげていきました。

個人的な思いとしては、そんな好循環を生み出す副業が、たくさんの企業で実現されればと願っています。


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【エビデンス】
*1 東京都「都内企業 兼業・副業に関する実態調査」
*2 中小企業庁「兼業・副業を通じた創業・新事業創出事例集」P31
*3 ヤフー株式会社「ヤフー、応募者4,500人以上から選出された、 10歳から80歳までのギグパートナー104名と業務を開始 – ニュース」


【著者】三島 つむぎ
ベンチャー企業でマーケティングや組織づくりに従事。商品開発やブランド立ち上げなどの経験を活かしてライターとしても活動中。