紹介予定派遣とは?メリットとデメリットを把握し正しい選択肢として理解しよう

紹介予定派遣とは?

紹介予定派遣とは、後で正社員または契約社員として雇用されることを前提として、一定期間派遣労働者として働くことをいいます。

紹介予定派遣の目的(制度趣旨)は?

紹介予定派遣の場合、派遣労働者を受け入れる企業(派遣先)は、将来的にその派遣労働者を正式に雇用したいというニーズを持っています。

しかし、すぐに自社で直接雇用をしてしまうとミスマッチのリスクがあるので、いわば「お試し期間」として「派遣」という形で労働者を受け入れるのが、紹介予定派遣制度の趣旨です。

紹介予定派遣制度の認知度

下記の表は、平成29年において、事業者側の紹介予定派遣制度に関する認知度を調査した厚生労働省のデータを示しています。

同表によると、事業者全体のうち、紹介予定派遣制度を利用したことがある割合が6.8%、利用したことはないが制度を知っている割合が32.7%となっています。

(出典)厚生労働省「平成29年派遣労働者実態調査の概況 事業所調査 9 紹介予定派遣制度

これに対して次の表は、同じ調査において得られた派遣労働者側の紹介予定派遣制度に関する認知度に関するデータを示したものです。

同表によると、派遣労働者全体のうち、紹介予定派遣制度を知っていると回答した割合は44.1%となっています。

(出典)厚生労働省「平成29年派遣労働者実態調査の概況 派遣労働者調査 7 紹介予定派遣の周知状況

このように、事業者・派遣労働者のいずれも、紹介予定派遣制度に対する認知率は5割未満にとどまっており、十分な周知が行われているとは言えない状況です。

しかしその反面、紹介予定派遣制度に対する潜在的なニーズは大きく存在すると考えられます。

紹介予定派遣が通常の派遣と異なる点は?

紹介予定派遣は、冒頭で解説した制度の趣旨・目的に鑑み、以下の各点について通常の派遣とは異なっています。

派遣期間=試用期間|6か月間に限定される

紹介予定派遣では、派遣先との直接雇用を前提としている関係上、当初の派遣期間はあくまでも派遣労働者の適正を見極める「試用期間」のような位置づけになります。

そのため、厚生労働省が定める指針によって、派遣期間の上限が6か月間とされています(派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針第2 15(1)、派遣先事業主が講ずべき措置に関する指針第2 18(1))。

通常の派遣の場合、派遣期間の上限は3年であることに比べると(労働者派遣法35条の3)、紹介予定派遣の派遣期間の上限はかなり短く設定されているといえるでしょう。

派遣先による事前の面接が可能

通常の派遣の場合、派遣労働者の就業機会を不当に狭めないようにするなどの理由から、派遣先企業による面接などが禁止されています(労働者派遣法26条の6)。

これに対して紹介予定派遣の場合、もともと派遣先企業における直接雇用が前提とされているため、派遣先企業が早い段階で派遣労働者の適正を見極める必要性が高いといえます。

この点を考慮して、紹介予定派遣の場合については、上記の面接禁止のルールが適用されず、派遣先企業が受け入れ前に派遣労働者の面接などを行うことが認められます。

派遣期間中でも直接雇用への切り替えが可能

通常の派遣の場合、派遣期間中における派遣先企業との直接雇用への切り替えは、派遣元企業との間の労働契約(雇用契約)違反に該当します。

これに対して紹介予定派遣の場合、派遣期間中の直接雇用への切り替えが認められるような契約が派遣元・派遣先の間で締結されます。

したがって、派遣元との契約満了時に限らず、いつでも派遣先との直接雇用に切り替えることが可能です。

紹介予定派遣のメリット

紹介予定派遣には、派遣労働者側にとって以下のメリットがあるので、就職活動における選択肢の一つとして検討する価値があります。

実際に働いたうえで会社の良し悪しを確認できる

紹介予定派遣の場合、まずは派遣労働者という形で会社の業務を体験した後、正式な労働契約(雇用契約)を締結するかどうかを判断するという流れになります。

派遣先企業が自分に合っているかどうかを、派遣期間中によく見極めることができる点が、紹介予定派遣の大きなメリットの1つといえるでしょう。

正規雇用に繋がりやすい

統計上も、紹介予定派遣による派遣労働者は、その後派遣先との間での正規雇用に繋がりやすいというデータが示されています。

(出典)厚生労働省「平成29年派遣労働者実態調査の概況 事業所調査 8 派遣労働者を正社員にする制度

上記の表は、平成29年の厚生労働省の調査において判明した、派遣労働者の正社員登用率を示しています。

同表によると、正社員への登用制度が設けられている事業所は全体の13.1%に過ぎず、実際に過去1年間において派遣労働者を正社員に登用した事業所は合計3.0%に過ぎません。

(出典)厚生労働省「平成30年度労働者派遣事業の集計結果(速報)」12頁

これに対して、上記の表は、平成30年に厚生労働省が紹介予定派遣について調査したデータを示しています。

同表によると、同年中に紹介予定派遣により派遣された労働者の総数(36791人)のうち、直接雇用に結びついた労働者数は19214人であり、全体の52.2%を占めています。

この割合には、正社員としての登用だけではなく有期雇用労働者(パート・アルバイトなど)としての登用も含まれているため、1つ目の表のデータと単純に比較することはできません。

しかし、紹介予定派遣による派遣労働者のうち、相当数が直接雇用に至っているということは、紹介予定派遣制度の「ミスマッチをなくす」という効果が表れた結果といえるでしょう。

必ず正規雇用されるとは限らない点に注意

ただし、前の項目で紹介したデータを裏から考えれば、紹介予定派遣により派遣されたとしても、その後必ず派遣先企業との直接雇用が実現するとは限りません。

直接雇用が実現しなかった場合、派遣元企業に戻って、次の派遣先を探してもらうことになります。

しかし、派遣元との労働契約(雇用契約)に期間が設けられている場合、期間満了の時点で雇い止めが行われる可能性があるので注意が必要です。

上記の注意点を踏まえると、紹介予定派遣を利用する場合には、派遣期間の6か月の間に成果を出していくという覚悟を持っておくことが大切といえるでしょう。

派遣期間が短いので職場を転々とするリスクがある

紹介予定派遣の場合、派遣期間が最大6か月間と、通常の派遣に比べてかなり短く設定されています。

そのため、派遣先企業との間で直接雇用に至らないことが続く場合には、必然的に職場を転々とせざるを得ません。

紹介予定派遣を利用する場合には、落ち着いて仕事ができる職場が見つかるまでの間、目まぐるしく変わる環境に適応する努力が求められます。

まとめ

紹介予定派遣は、認知度がまだまだ高くない制度ではあるものの、労働者にとって企業選択の選択肢を広げる可能性を持っています。

「派遣」という働き方に対してマイナスイメージを持つ方も多いですが、紹介予定派遣制度が持つメリットを踏まえて、ぜひ就職活動の際の選択肢の一つとして検討してみてください。


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【著者】阿部 由羅
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。専門はベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
ホームページ:https://abeyura.com/
Twitter:@abeyuralaw