「ソーシャルグッド」とは 転職・就職先を決定する理由にもなる価値観に注目しよう

近年注目をあつめる「ソーシャルグッド」というキーワード。この言葉は全世界で広がりを見せつつあります。
環境問題や貧困、ジェンダーといった問題の解決、あるいは地域コミュニティへの貢献など「社会に良いインパクト」を与える製品・サービスや活動を指すもので、「ソーシャルグッドな企業」を目指すところも増えています。

若い世代は社会貢献への意識が強い、とよく言われますが、実際はどうなのでしょうか。また、転職エージェントとして、どのようにすれば求職希望者に「ソーシャルグッドな働き方」を提供できるでしょうか。

ミレニアル・Z世代は「意識が高い」?

いわゆる「ミレニアム世代(1980年頃~1990年代中盤生まれ)」が社会の中心になり、そして「Z世代(1990年中盤以降~2000年代生まれ)」が社会に参加してくるのが今の社会と言えるでしょう*1。
また、転職を現在考えている、あるいは先々考える可能性が高い世代でもあります。

これらの世代の若者は社会問題への意識が高い、と言われますが実際はどうでしょうか。

「社会に役立ちたい」新入社員は微増

日本生産性本部が新入社員を対象に実施したアンケート調査のうち、働く目的についての質問への回答は以下のようになっています(図1)。

図1 新入社員の「働く目的」
(出所:「平成31年度 新入社員『働くことの意識』調査結果」日本生産性本部)

「社会に役立つ」と回答している新入社員の数は近年減少しつつあるものの、昔に比べれば多い方と言えるでしょう。

そして、「SDGs」という言葉の認知度については、電通の調査結果があります(図2)。

図2 年代別「SDGs」認知率
(出所:「電通 第3回『SDGsに関する生活者調査』のご紹介」電通)

10代、20代の認知率が高くなっています。
特に「学生」の認知率は45.1%と高く*2、Webや授業での情報入手が多くなっているということです。
ただ、2019年から2020年の1年の間だけでも、全世代で認知率が大きく上がっていることがわかります。ソーシャルグッドは幅広い世代の関心事になりつつあると言えるでしょう。

「社会に貢献できる」転職理由も

では、転職において「ソーシャルグッド」を重視する人はどのくらいいるのでしょうか。

マイナビが転職者を対象に実施した調査によると、現在の会社を転職先に選んだ理由として「社会との関わりを持てる、社会に貢献できる」を選んでいる人が一定数、存在しています(複数回答)。

この回答を選んだ人の年齢や職種を見ると、下のようになっています(図2、3)。

図2、3 転職先を決めた理由として「社会との関わりを持てる、社会に貢献できる」を選んだ人の割合
(出所:「転職動向調査 2021年版(2020年実績)」株式会社マイナビ) p26

収入や勤務形態、福利厚生など基本的な条件が同じ場合、社会との関わりや社会貢献を重視する人も一定数いることがわかります。

「ソーシャルグッド」拡大の背景

ソーシャルグッドという概念が世界的に拡大しているのには、いくつかの背景が考えられます。
2015年に国連サミットで採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」の認知率向上はもちろん大きなきっかけになっていると思われますが、他に以下のような要素が考えられます。

SNS利用との関係

電通の別の調査の中に、興味深い結果があります。

この調査は、SNS利用頻度とソーシャルグッド意識との関係を調べたものです。
SNSへの投稿を週1回以上している人は、1回未満の人に比べてソーシャルグッドに対する意識が高いという結果が得られているのです(図4、5)。

図4、5 SNS利用頻度とソーシャルグッド意識の関係
(出所:「電通と電通総研、ソーシャルメディア利用×ソーシャルグッド意識の5か国調査を実施」電通)

SNSを通じて多様な価値観や様々な社会問題に触れる機会が増え、問題を身近に感じる機会が増えていると考えられます。世代や国境を越えた「共感」の輪が広がりやすい環境にあるのがソーシャルグッド意識の高まりのひとつの要因でしょう。

「SNS×自助」の様子も

また、不安定さが続く近年において注目したい現象があります。クラウドファンディングです。

ボランティアの資金集めなどのために、ネット上で幅広く募金を募るクラウドファンディングのシステムは、プロジェクトやその主催者情報がSNSで拡散され、そこに共感した人が自由な金額を提供するというものです。

特にコロナ禍では、飲食店を再建するための多くのクラウドファンディングの応募があり、多額の資金が寄せられています。
風評被害でレストラン営業を断念したある飲食店の場合、1500万円以上を集めています。

クラウドファンディングの情報はSNS上に流れ、シェアされて広がります。「自分たちの手でこの人の力になろう」という動きは、SNS上では強くなると考えられます。

「ソーシャルグッド」を軸にしたマッチング

今は多くの企業が、ソーシャルグッドをブランディングに活用しています。マーケティングだけでなく、採用に関してもソーシャルグッドな「企業理念」を掲げるところが増えてきました。

企業と求職者のマッチングをはかる上で「ソーシャルグッド」をひとつの要素にすることは、定着率向上やミスマッチ防止の一つの手段になり得る可能性を秘めています。こうした軸を転職エージェント自身がひとつの方向性として打ち出すのも、他社との差別化をはかるひとつの手段になるでしょう。

ソーシャルグッドをどこまで重要視するか。
履歴書に書くひとつの項目として設定してみるのも良いかもしれません。また、最近どのような運動に共感したか、どのような行動を取ったかということを尋ねてみるのも、ひとつの方法です。

また、求人企業からはCSR活動などについてより具体的にヒアリングし、求職者に求めるものは単純な能力なのか、企業理念なのかといったことを把握しておくのも良いでしょう。

「ソーシャルグッド」と一口に言っても、その内容は様々ですし、同じ世代であってもひとつの問題についてそれぞれ違う立場があることに変わりはありません。

しかし、給料が上がりにくい今の日本社会では、転職先や人材を紹介する大きな軸になっていくかもしれません。


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【エビデンス】
*1 「通商白書2021」経済産業省
(※注)ミレニアル、Z世代の定義については様々あるが、経済産業省はレポートの中でミレニアル世代を「1983年~1994生まれ」、Z世代を「1995年~2003年生まれ」と定義している。
*2 「電通 第3回『SDGsに関する生活者調査』のご紹介」電通
*3 「転職動向調査 2021年版(2020年実績)」株式会社マイナビ p26


【著者】清水 沙矢香
2002年京都大学理学部卒業後、TBS報道記者として勤務。
社会部記者として事件・事故、科学・教育行政その後、経済部記者として主に世界情勢とマーケットの関係を研究。欧米、アジアなどでの取材にもあたる。
ライターに転向して以降は、各種統計の分析や各種ヒアリングを通じて、多岐に渡る分野を横断的に見渡す視点からの社会調査を行っている。

Twitter:@M6Sayaka