
コロナ禍でテレワークが普及したことにより、都市部で働いている人を中心に、地方移住を検討する人が増えてきました。
しかし、田舎に移住して「失敗した」と後悔する人も少なくありません。
転職エージェントとしてどのように支援すれば、求職者に「地方移住して良かった」と思ってもらえるのでしょうか。
Uターン・Iターン転職に対する考え方や、地方移住のメリットとデメリット、Uターン ・Iターン転職を成功させるためのポイントを確認しておきましょう。
Uターン転職・Iターン転職に対する考え方
Uターン転職とIターン転職は、どちらも「都心から地方に転職すること」を表しています。
Uターン転職 | 地方で生まれ育った後、都会で学校を卒業し、そのまま都心で就職 その後、生まれ育った土地に別の仕事を求め、移住して転職すること |
Iターン転職 | 都会に生まれ育ち、都心で就職した後、地方に移住して働くこと |
ここでは、都心で働いている人が「地方に転職すること」をどのように考えているのかを確認してみましょう。
地方移住に関心がある人の割合
NTTデータ経営研究所が、現在都市部に居住・就業している正社員を対象に実施したアンケート調査のうち、「地方移住への関心と地方移住の検討状況について」の質問への回答は以下のようになりました。

地方移住に関心があるとした回答は、全体の27.9%です。*1
またこの27.9%のうち12.9%は、コロナ禍をきっかけに地方移住に関心を持ったと回答しており、コロナ禍を機に地方移住に関心を持った層が2倍弱に増加したと考えられます。
さらに地方移住に関心がある人のうち、約半数は移住に向けた検討・準備を行っていると回答しており、具体的な行動を開始しているようです。
Uターン転職やIターン転職を希望する人は、今後も増えていくことでしょう。
Uターン転職・Iターン転職への不安
Uターン転職・Iターン転職を希望している人は、さまざまな不安を抱えています。
マイナビがUターン転職を視野に入れている正社員を対象に実施した「Uターン転職に関する実態調査」で、Uターン転職には下記のような不安があることが分かりました。

全体では「給与が下がる」が39.8%で最も高く、男女別でも同様の傾向が見られました。*2
2位以降は「仕事に就けるか心配(33.6%)」、「求人数が少ない(29.6%)」と、就職自体に関する項目が続いています。
年齢別に見ると、35~39歳では「求人数が少ない」が40.0%と割合が高くなっており、「年齢が高くなるほど仕事がないのでは?」と不安を抱いている人が多いようです。
地方移住のメリットとデメリット
地方に移住することは、都会では感じられないさまざまなメリットがあります。
しかし、必ずしも良いことばかりではありません。
移住して仕事を変えた後に「想像していた生活と違う」と後悔しないためにも、デメリットもしっかり把握して検討する必要があります。
もし求職者が、「田舎暮らしに憧れている」「のんびり暮らせそうだから」などの理由で地方への転職を希望している場合は、デメリットや心構え、リスクとなり得ることもきちんと伝えることが大切です。
メリット
地方移住した場合のメリットは、以下のようなものが考えられるでしょう。
・自然豊かな環境で生活ができる
・通勤ラッシュから解放される
・子育てがしやすい
地方に移住すると、豊かな自然が身近にあり、周囲の景色や四季の移り変わりに心を和ませる環境でゆったりと過ごすことができます。
また地方都市では、都心ほど過密な通勤ラッシュを経験することも少ないでしょう。
車通勤を認める会社も多いので、混雑によるストレスの少ない暮らしが可能になります。
子育てがしやすいのも、地方移住のメリットです。
地方は都市部よりも待機児童が少ないため、幼稚園や保育園にも入りやすいからです。*3
そのため、仕事と子育てのバランスが取りやすい傾向にあります。
デメリット
地方移住した場合のデメリットは、以下のようなものが考えられるでしょう。
・風土になじめない可能性がある
・利便性が悪いことがある
・収入が減る可能性がある
移住をしてみたものの、地方での生活に順応できず後悔する人もいます。
例えば、地域の付き合いや、特有のしきたりを重んじるところも少なくありません。
地域の付き合いを上手にこなす自信のない人は、比較的大きい地方都市へ移住した方が安心です。
また地方では、電車やバスなどの公共交通機関が1時間に1本程度しか運行がないところもあり、車を持っていないと不便なことも多くなります。
お店も都会に比べて少ないため、都会での生活スタイルとは大きく異なるでしょう。
さらに、Uターン転職やIターン転職によって、年収が下がることも少なくありません。
国土交通省の「賃金、労働生産性の地域間格差」によると、東京都や神奈川県、大阪府といった都心の方が、地方に比べて給与水準が高くなっています。*4
仕事の内容や量などは同じでも、年収が下がる可能性はあります。
Uターン転職・Iターン転職を成功させるためのポイント
転職活動の支援として、転職エージェントが行うことはいつもと変わりません。
しかし、Uターン転職・Iターン転職だからこそのポイントがあります。
・自己理解を促す
・補助金などの制度を調べる
自己理解を促す
まずは求職者に、「なぜUターン転職・Iターン転職が必要なのか」をもう一度整理してもらいましょう。
マイナビが行った調査で「Uターン転職をしたい理由」として最も多かったのは、「自分に合った生活スタイルや趣味を生かした生活がしたいから」の32.0%でした。*2
地方に移住し、仕事を変えることで「自分らしく生きることを実現したい」と思っている人が多いようです。
しかし地方に移住したからと言って、「自分らしく生きることを実現できる」「休みやプライベートを充実させられる」わけではありません。
会社や仕事内容によっては、今までよりも忙しくなる可能性もあります。
下記の質問を参考に、自己理解を促しましょう。
- なぜUターン転職・Iターン転職をするのか
- Uターン転職・Iターン転職によって何をかなえたいのか
- 転職にあたって譲れない条件は何か
- 自分のスキルや特性を使ってどのように企業に貢献していきたいのか
田舎暮らしへの憧れだけでは、転職を成功させることはできません。
補助金などの制度を調べる
地方へ転職する場合、ターン先の地方自治体の支援を受けられる場合があります。
補助金や移住パスポート、空き家バンクなどを利用することで、引っ越し費用などを抑えることができるでしょう。
特典や支援内容は地域によって異なるため、事前に調べておくことが必要です。
各都道府県が運営している移住ポータルサイトから確認することができます。
例:石川県の場合
いしかわ移住支援事業*5 | 東京23区に5年以上在住もしくは通勤された後、石川県内へUIターンし、移住支援金対象法人に就業された方などに移住支援金を支給 世帯の場合:100万円(18歳未満の子1人につき30万円加算) 単身の場合:60万円 |
いしかわ移住パスポート*6 | 移住前後の負担軽減のため、協賛店舗から割引などの特典サービスなどが受けられる |
いしかわ空き家情報ナビ*6 | 各市町の「空き家バンク」に登録された物件情報をデータベース化して情報提供 |
まとめ
転職エージェントとしては、Uターン転職・Iターン転職の支援は難しく感じる側面もあるでしょう。
まずは「なぜUターン転職・Iターン転職が必要なのか」をヒアリングし、求職者の希望をかなえてあげられるように考えることが大切です。
ワークライフバランス重視で自分や家族の時間を大切にしたいのなら、残業が少ない都市部の企業に転職をした方が良い可能性もあります。
求職者に寄り添い、転職を成功させましょう。
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【エビデンス】
*1 NTTデータ「地方移住とワーケーションに関する意識調査」
*2 マイナビ「Uターン・Iターン転職 」
*3 厚生労働省「保育所等関連状況取りまとめ(令和2年4月1日)」P5
*4 国土交通省「賃金、労働生産性の地域間格差」P1
*5 石川県「いしかわ移住支援事業」
*6いしかわ暮らし情報ひろば「移住への道」

【著者】髙橋 めぐみ
求人情報メディア・人材紹介等の総合的な人材サービスを提供するプライム市場上場企業(元 東証1部)に勤務。在職中に250社以上の企業を取材し、求人広告の作成等に携わる。その後、教育業界に転職。現在はこれまでの経験を活かし、人材や教育に関する記事を中心にフリーライターとして活動中。