転職したいのに…まわりの理解が得られない人に伝えたいこと

「出る杭は打たれる」という言葉があるように、なにかに挑戦するとき、まわりからネガティブな感情を向けられることは少なくない。

「絶対に失敗する」「やめておけ」「お前なんかができるわけない」
こういった言葉に辟易した人も多いだろう。

しかしいまは、「批判は気にしなくていい。どんどん挑戦すべき!」という声も大きくなっている。「理解しない人は無視していい」と。

たしかに、批判する人を「無能」だと決めつけてしまえば、気持ち的には楽になるだろう。でもそれは、まわりを悪者にして楽をしたいだけじゃないだろうか。

「良薬口に苦し」というように、耳が痛い言葉を切り捨てるのは、「良薬」を拒否するのと同じようなものだ。

転職は「前向きな行動」だけど「有利」かは別の話

令和に改元されて数年。

いままでのように、新卒で入社した企業に定年まで勤める、という人は減っている。一方で、転職という選択肢を選ぶ人は着々と増加中。

2008年のリーマン・ショック後はがくんと減ったが、2011年ごろから再び増えはじめ、2019年には351万人が転職しているほどだ。*1

別の統計によると、「転職は前向きな行動である」と認識している人は、男性20代で64.3%、男性30代で68.5%、女性20代で81.6%、30代で74.1%。転職をポジティブにとらえている人が多いのがわかる。

しかしそれと同時に、「転職は有利である」という質問に「そう思う」と答えたのは、男性20代で43.3%、男性30代で43.7%、女性20代で41.8%、女性30代で35.3%と、半数以下という結果に。

つまり、転職という行為自体への理解は進んでいるが、実際のキャリアにいい影響を及ぼすかどうかはまた別の話、といえそうだ。*2

そんな状況の現在、いままでどおりがいい人と挑戦したい人のあいだに溝が生まれるのは、当然のことかもしれない。

「まずは3年勤めるべき、入社した会社に尽くそう」「いやいや、早く見切りをつけて次に行き、キャリアアップすべきだ」のように。
前者の意見は「古い」と言われ、後者の意見が「トレンド」としてもてはやされる場面を、わたしは何度も見てきた。

「挑戦に対しネガティブな反応をする人はわからずや」
「古い考えの人は無視していい」
「出る杭は打たれるからなんと言われようが行動あるのみ」

そんな言葉を、SNSやネットニュースで目にしたことも多いのではないだろうか。

反対意見をすべて無視して突き進む恐ろしさ

数年前のブロガーブームが、まさにそうだった。

新卒で入社した会社を数年で辞め、ブログで生計を立て、SNSやオンラインサロンでファンを増やしている若者たちが脚光を浴びていたころだ。

現在アラサーのわたしはまさにそのど真ん中にいて、まわりの同年代ブロガーたちは、次々と月収100万円を達成していった。

そういう人たちはこぞって、こう言っていたのだ。
「新しい生き方はどうせ理解されない、反対する人は無視しろ」と。

実際、その言葉を真に受け、大学を中退してブロガーになると宣言して炎上した人を数人見かけたことがある。

まわりが必死に「とりあえず大学は出ておけ」「大学に行きながらでもブログは書ける」といっても、「理解しない人がダメなんだ」と突き進み、数か月後にはブログの更新が途絶え消息不明状態になっていた。

勢いで仕事を辞め、ブロガーサロンにカネを払いながら実質収入ゼロの人だって何人もいた。いくらほかの人が止めても、「夢を追いかけてなにが悪い」と聞く耳持たず。

その人たちがその後つづった「ブロガーに踊らされ職も貯金も失いました」的なエントリーなんて、探せばいくらでも見つかる。

もちろん、ブロガーになることが悪いのではない。糧になる失敗だってある。

ただ、まわりがこぞって反対する決断には、たいていなにかしらの「致命的欠陥」があるのだ。
それを解消しないかぎり失敗する可能性はかぎりなく高く、そのうえまわりの反対を押し切った以上、失敗の代償はより一層大きい。

だからわたしは、「反対意見は無視していい」と無責任に背中を押す人に対し、あえてこう言いたいのだ。

「反対意見を問答無用に切り捨て突き進むことで、軌道修正のチャンスを棒に振るのはもったいないよ」と。

ちゃんと準備したうえでの挑戦なら反対されることは少ない

わたしは、ある日突然「ライターになる!」と宣言してライターになったわけではなかった。

毎日毎日何記事もブログにアップし、無償でほかの人の個人ブログに寄稿、そしてメディアに無償で寄稿。その実績をもとにさまざまなメディアに営業し、いくつかお仕事をいただくことができた。

ツイッターも毎日がんばって更新してフォロワーを増やし、インフルエンサーに拡散してもらえるよう努力もした。

……とは言いつつ、それではあまりにも不安定。
実はウラで、クラウドソーシングを使ってひたすら記事を書き、最低限の生活費を稼いでいた。1文字1円以下で、月80記事くらいは書いていたかな。

つまり「ライターとしてやっていきます」と宣言した時点で、

  • 継続的に月100記事ちかくブログを更新している実績
  • 少ないながらも報酬ありの仕事を受けた経験
  • クラウドソーシングで生活費が稼げる環境

の3つがそろっていたわけだ。

まわりのブロガーたちはみんな「こんな生き方は理解してもらえない」と書いていたからドキドキしたが、わたしのケースではそんな声はゼロ。

家族・友人・フォロワーの方々みんなに「応援している」と言ってもらったうえでの挑戦だった。

まぁ、まわりに恵まれてたといえばそうなんだけどね。

でもこういう経験があるから、(手前味噌だが)こう思ったのだ。
「反対する人はわかってない」と相手を悪者にするのは、まわりが認めるほどの準備をせずに楽をしたいだけじゃないのか、と。

本人の見通しが甘いから「まわりは理解してくれない」のでは?

大前提として、「なにをしても文句を言ってくる人」というのは存在する。

気に入らないからああだこうだといちゃもんをつけてくる人はもう、どうしようもない。無視するしかない。

がしかし、だからといって、「反対する人間は無視していい」と結論を出すのは早計だと思う。

なぜなら多くの場合、反対するなりの「理由」があるからだ。

もし営業職のあなたが、思い切ってエンジニアに転職する気だとしよう。

そこで親から、「転職なんてやめておけ」と反対を受けたとする。

ただ心配してるだけかもしれないし、単純に転職に悪いイメージをもっているだけかもしれない。それなら、あまり気にする必要もないだろう。

でももし人生経験豊富な親が、「自分ならお前のようなエンジニアに仕事を頼まない」と思って反対していたとしたら?

「うちのエンジニアはみんな○○ができるが、お前はそれを勉強していないだろう」

「エンジニアは場所によって労働環境が悪いと聞く。しっかりした会社に転職できるあてはあるのか」

「まずはスクールで実力をつけ、副業でもなんでも1つ仕事を受けてからにしたらどうだ」

そういう考えから反対していたのだとしたら、それは「向き合うべき意見」だろう。

でも具体的な準備をしておらず、将来のビジョンがぼんやりしている人からすれば、そういうタメになる正論はわずらわしい。

正面から話すと分が悪いから、「なにもわかっていない」と相手のせいにして耳をふさぐ。

で、見通しが甘くていろいろ突っ込まれているだけなのに、「自分のまわりはわからずやばっかり」だと嘆くわけだ。

つまり「理解してくれない人たち」に囲まれるのは、本人が目先のことしか考えておらず準備が適当だからなのでは?と思う。

耳の痛い言葉にこそ価値がある

「反対意見は気にするな」という主張は、挑戦者の後押しをし、いままでとはちがう選択肢を選ぶ人たちに勇気を与えるかもしれない。

でも場合によっては、向き合うべき意見を切り捨てイエスマンで囲うことを勧める、無責任な言葉にもなりうる。

相手を「わからずや」だと決めつければ、耳の痛い意見に向き合わなくて済むから、たしかに楽だろう。

でもそうやって都合の悪い意見を切り捨て続ければ、心配して意見を言ってくれる人はどんどん離れていく。待っているのは、「手痛い失敗と孤独」だ。

もちろん、なにを言っても理解してくれない人もいるし、反対意見を聞いたうえで受け入れるかどうかは自由。

でもまっとうな反対意見にすら耳を貸さず、「出る杭は打たれる社会なんだ!自分は進むぞ!」と視野狭窄に陥るのは、すごくもったいない。少し話を聞くだけで、その挑戦の成功確率がぐっと上がったかもしれないのに。

「まわりの反対を押し切って成功した」という美談のかげには、「まわりが止めたのに突っ走って失敗した」という人たちがごまんといるわけで。

「良薬口に苦し」という言葉のとおり、苦くとも飲んだほうがいい薬はあるのだ。

まわりがこぞって大反対するというのであれば、その状況を嘆く前に、「もしかして自分はなにか致命的にまちがっているのかも?」と立ち止まってみたほうがいいと思う。

ちゃんと相手の「反対する理由」に向き合うことでうまく軌道修正し、いい結果につながるかもしれないから。

それに、せっかく挑戦するなら、応援してくれる人が多いほうがいいもんね。

転職は、キャリア形成を左右する一大決心。
だからこそ、「価値のある反対意見」には、耳を傾けることをおすすめしたい。


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【エビデンス】
*1 総務省「増加傾向が続く転職者の状況」p2
統計トピックスNo.123 増加傾向が続く転職者の状況 ~2019年の転職者数は過去最多~
*2 マイナビ「転職動向調査2020年版(2019年)」p34


【著者】雨宮 紫苑
ドイツ在住フリーライター。Yahoo!ニュースや東洋経済オンライン、現代ビジネス、ハフィントンポストなどに寄稿。著書に『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)がある。Twitter:@amamiya9901