採用面接が終わりに差し掛かる頃、面接官から必ず聞かれる、
「最後に、何か質問はありますか?」
という言葉。
いわゆる“逆質問”と呼ばれるものですが、逆質問をめぐっては、応募者と面接官の意識に、乖離が起きているように思えてなりません。
筆者は面接官として数多くの面接を経験していますが、特に気になるのが、ここぞとばかりに「自分をアピールするため」に繰り出される逆質問です。
場合によっては逆効果と感じることがあります。
本稿では、「本当に入社したい企業の内定をつかむために最適な逆質問とは何か」という観点から、どんな逆質問をすべきか(あるいはすべきでないのか)をご紹介します。
現役の面接官として感じていた「逆質問」への違和感
先に核心に触れてしまえば、“逆質問の機会は、自己アピールではなく応募者であるあなたが本当に知りたいことを知るために使うべき”です。
逆質問の誤解
例えば、逆質問について以下のようにいわれることがあります。
- 逆質問は応募者にとって自分をアピールできる最後の機会
- 面接官は逆質問によって応募者のコミュニケーション能力を試している
- 逆質問は自分を評価してもらう面接の一環ということを忘れてはいけない
筆者自身が面接の現場に携わってきた経験からいえば、これらは的外れといわざるを得ません。
面接官が応募者に質問を促す最大の目的は、
「自社に対する応募者の疑問や不安を打ち明けてもらい、それを解消するため」です。
ここで一度、面接官の視点に立って考えてみましょう。
もし、面接後に応募者の志望度が下がり、選考途中で辞退されてしまっては、面接官としては失格です。
そこで、応募者の疑問や不安を解消するために、質疑応答の時間を取っているわけです。
仮に、逆質問を促しておきながら応募者の自由な質問を許容しない企業なら、入社は慎重に検討すべきかもしれません。
傲慢とも受け取れるその態度は、入社後も続く可能性があるためです。
自己アピール狙いの逆質問は見抜かれる
「不安や疑問があるなら教えてほしい」と質問を促す面接官の思いとは裏腹に、実際には、自己アピール狙いの逆質問をする応募者が多くいます。
例えば、“面接官ウケする質問”などと紹介されている例文を暗記しているケースです。
そんな逆質問は、面接官から見るとすぐにわかります。
ポイントは2つあり、1つめは質問しているときに「本当に聞きたい人の目」をしていないこと。2つめは質問に回答しても、話が弾まないことです。
面接官が聞かれたことに丁寧に答えても反応が薄く、「これを聞いて、どうしたかったの?」と思うこともしばしば。
このような逆質問では、評価が高まるどころか逆効果です。
良い逆質問とは何か
では、良い逆質問とは何でしょうか。
それは「応募者であるあなたにとって有意義な質問」といえます。
面接は、あなたにとっても面接官にとっても、貴重な時間を割いて行われるものです。
上辺だけの評価アップを狙う不毛な質問をするくらいなら、有意義な質問をしましょう。
有意義な逆質問
具体的にどんな逆質問が有意義なのかといえば、2つあります。
疑問や不安を解消するための質問
1つめは、「あなた自身がその企業に入社を決めるうえでネックになっている疑問や不安を解消するために役立つ質問」です。
疑問や不安があるなら、ひとりで悶々と考えるより直接聞いたほうが、圧倒的に正しい判断ができます。
面接における逆質問は、その企業の社員や役員に、直接聞きたいことを聞ける貴重な機会です。
あなたが入社するに値する企業なのか見極めるために、逆質問を有効活用しましょう。
聞きたくてたまらない質問
2つめは、「あなたが強く興味関心を抱いていて、聞きたくてたまらない質問」です。
事業のこと、社内の雰囲気、社長の人となり、面接官自身のこと──、何でもかまいません。
聞きたいことがあれば、素直にそれを聞きましょう。
というのは、あなたが聞きたくてたまらない質問は、あなたにとって、重要な価値を持つ事柄だからです。
面接官を通して新たな情報を得ることで、応募先の企業があなたに合う企業なのか、明らかになっていくでしょう。
逆質問で形勢逆転を狙いたいときの手
「そうはいっても、どうしても自分の評価を上げたい。好印象を与える逆質問をしたい」
……という方もいるかもしれません。
そんな方に前提として知ってほしいのは、“必要な自己アピールは、逆質問の時間までに終える必要がある”ということ。
面接官からの「最後に何か質問はありませんか?」は、「そろそろ面接を終わります」という締めの合図でもあります。
この時点で、すでに評価は終わっているのです。
その前提のうえではありますが、手応えがないままに逆質問の時間となってしまい、どうしても形勢逆転を狙いたい状況に陥ったとしましょう。
ここで本当の意図(=評価を上げたい)を隠したおかしな逆質問をするくらいなら、堂々と自己アピールしたほうが、まだ可能性があります。
例えば、
「質問ではなく恐縮なのですが、どうしてもお伝えしたいことがあります。よろしいでしょうか」
と断ってから、伝えきれなかったことを伝えましょう。
心に残った逆質問の実例
さて、ここで実際に筆者の心に残っている逆質問の実例を2つ、ご紹介します。
「質問は、ありません」
まず心に残っているのは、もともと自社商品の愛用者でずっと入社を夢見ていたというAさん(当時28歳)です。
「最後に、何か質問はありませんか?」と尋ねると、にっこり笑顔でこう言いました。
はい、質問はありません。
今回お話させていただいて、ますます御社に入社したい気持ちが強くなりました。
本日はお忙しい中お時間を作っていただき、誠にありがとうございました。
面接官には、逆質問から不安や疑問を聞き出したい意図があることは先に述べたとおりですが、Aさんには不安や疑問がなく、志望度が高いことが伝わる潔い回答でした。
一般的には、「質問はないと答えると、面接官から意欲がないと思われ低評価になる」といわれているようですが、一概にそうとはいえない実例です。加えて、この面接では話が盛り上がり、時間が押している背景がありました。
Aさんは無駄に面接を長引かせることなく、
「質問がなければ素直にないと答えて面接を切り上げ、相手の時間を大切にする人」
という印象が残りました。
Aさんには面接後すぐ内定を出し、即戦力となってくれたのはいうまでもありません。
「本当は、残業がどれくらいあるのか、不安です」
次に、激務で有名な企業から転職希望のBさん(当時36歳)です。
面接の最後に質問を尋ねると、
「御社では海外事業も展開されているかと思いますが、今後の展望を教えていただけますか」
と質問されました。
回答したものの、どうもBさんの顔色が晴れません。
そこで重ねて、
「他に疑問点や不安な部分はありませんか。
この機会に、どんなことでも遠慮なく、ざっくばらんに質問してくださいね」
と伝えると、Bさんからこんな言葉が出てきました。
こんなことをおうかがいしたら意欲がないと思われてしまうかもしれませんが、
本当は、残業がどれくらいあるのか、不安です
今にも泣き出しそうな様子に事情を聞いてみると、実はBさんのお父様が余命わずかと宣告され、闘病中とのこと。
「仕事への意欲は高いし、必ず会社に貢献するつもりだけれど、残された時間を家族で過ごすために、できる限り定時で退社したい」
との希望でした。
Bさんは採用が決まりましたが、面接で不安を打ち明けてくれたおかげで、会社はチーム編成を調整でき、Bさんは残業することなく会社に貢献してくれました。
やがてBさんのお父様は旅立たれましたが、そのときのBさんの言葉が忘れられません。
「おかげさまで、全身全霊、看病に打ち込むことができました」
さいごに
最後に「丸腰のすすめ」という話をして、本稿の締めくくりとしたいと思います。
付け焼き刃の策は捨てる
『策士策に溺れる』という言葉があります。
近年では、ネット上にノウハウやハウツー情報があふれ、付け焼き刃の策を振り回す応募者が後を絶ちません。
不自然な印象を受けるのみならず、ときには小賢しさを感じることも。
それが評価につながる職種ならまだしも、誠実さや素直さが求められる職種ならば、得策とはいえません。
どうぞ、面接官を付け焼き刃の策で騙し討ちにするのではなく、普段の自然な姿で、あなたの考えや思いを表現してください。
それが、本当のコミュニケーション能力ではないでしょうか。
丸腰で自分に合う企業を探す
そもそも、指一本でスマホから誰でも情報が取れる時代です。
ネットであなたが得た情報は、ほかの応募者も見ています。
差別化したい人こそ、丸腰で、ありのままのあなたで勝負です。
「そんなことしたら、内定がもらえない」ですって?いいではありませんか。
面接の場で、自然体で話ができたのに内定が出なかったのなら、その企業はあなたが入社すべき企業ではありません。
自然体の自分に合う企業に巡り会い、心身健康に楽しく働いて、世の中に「良い仕事」を届けてください。
それが、あなたのためにも社会のためにもなるのですから。
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【著者】三島 つむぎ
ベンチャー企業でマーケティングや組織づくりに従事。商品開発やブランド立ち上げなどの経験を活かしてライターとしても活動中。