転職活動における面接マナーのポイントは?メラビアンの法則から第一印象の要点を確認しよう

初めて会った人の第一印象は5秒で決まる、という考え方があることをご存知でしょうか *1

当然ながら面接の際も、この「第一印象」が合否判断に大きな影響を与える可能性があります。

そこで今回はこの第一印象の大切さと、それを支える面接マナーについて解説します。

誰もが目指せる「見た目が9割」の法則

第一印象を決定づけるのは「見た目が9割」といわれる、視覚・聴覚から得られる相手の情報です。

この「見た目」とは、顔立ちやスタイルといった表面的なものではなく、表情や身だしなみ、そして話し方など、自分で努力できる領域の要素です。

アメリカの著名な心理学者、アルバート・メラビアンは、人の第一印象は3つの要素によって構成されていると解説しています。

この要素のバランスは「メラビアンの法則」と呼ばれ、「見た目が9割」の概念になっているものです。

ここからは、面接時にも有効な「見た目が9割」を裏付ける要素について、「メラビアンの法則」を用いてご紹介します。

メラビアンの法則  *2、*3

1.  視覚情報:見た目  <表情・アイコンタクト・姿勢など>… 55%

2.  聴覚情報:声と話し方 <質・速さ・声の大きさ・口調など>… 38%

3.  言語情報:言葉  <言葉の意味・話の内容など>… 7%

上記の3要素のうち、視覚情報と聴覚情報の2要素が、いわゆる「見た目が9割」を理論付けています。

ただし、メラビアン氏自身も「話の中身が7%しか意味をもたないわけではない」と言うように面接や商談などのシーンにおいて、このバランスが状況によって異なってくることは容易に想像ができます。

このような場面では、この7%という数字以上に「発言内容(=言語情報)」の重要度は高まるものと考えられます。

しかし、前述の法則における「見た目」が占める数字からは、これらの重要性も十分に推測できます。

ここでは「見た目」の「視覚情報」をブラッシュアップし、好印象に繋げるための面接マナーについて、以下の4点に注目し説明します。

  • 衣服や身につけている物
  • ヘアスタイルやメイクなどの身だしなみ
  • 姿勢やお辞儀などの振る舞い
  • 表情や視線、アイコンタクト

上記のポイントは面接時に要となるマナーにも共通するものです。

それでは、面接時の評価ポイントである「身だしなみ」をはじめとする「見た目」について見ていきましょう。

「見た目=視覚要素」について

まずは面接時のスーツ選びのポイントを男女別に解説します。

もっとも、ここでご紹介するのは「ひとつのあり方」であり、どんな場面においても正解というものはありえません。

以下の基本を守りながらも、TPOに応じて使い分けて下さい。

服装(男性)

スーツ

色はネイビーやダークグレーなど深みのあるものを。

ジャケットは、肩のサイズの合うものを選びます。

なお、着丈はヒップが隠れるか隠れないかくらいの長さが適切で、ヒップが丸見えの短い丈はNGです。

着用時、ジャケットの一番下のボタンはとめずに外しておきましょう。

スラックスの幅について、広いものはやや長めに、細めのものは若干短めに調整すると好バランスです。

ただし、この丈が短かすぎるとカジュアルな雰囲気になるので注意しましょう。

メンズスーツは比較的豊富にサイズ展開されていますが、もし体に合ったサイズが見つからない時は、なじみのある紳士服店や百貨店のスーツフェア等でセミオーダーを検討してもよいでしょう。

紳士服量販店であれば、比較的安い価格からセミオーダーが可能です。

少し大袈裟なようですが、スーツのサイズ感は、見た目の印象を大きく左右しますので、これから用意する人は少し丁寧に探してみましょう。

画像1「スーツ選びは丁寧に」出所)写真 AC HP
https://www.photo-ac.com/main/detail/3906954
シャツ

生地の色は白が基本。

淡いブルーなども爽やかな印象ですが、スーツや肌の色に合うものを選びましょう。

首回りのサイズが合わないシャツはルーズな印象を与えてしまいます。首のサイズと肩から手首にかけての裄丈は、シャツ選びの際のチェックポイントです。

また、ジャケットの袖口からシャツが1〜1.5センチ程度見えているバランスが理想と覚えておきましょう。

なお、ボタンダウンのシャツはカジュアルな印象を与えるため、面接には不向きです。

ネクタイ

面接で好まれるネクタイの色は、誠実さを感じる青や積極的なイメージのえんじ色などです。

コーディネートの要となるネクタイは、職種やスーツの色なども考慮してセレクトしましょう。

冠婚葬祭に使う白と黒はもちろん原色の赤や紫も面接時にはNGです。

大柄のネクタイやコントラストの強い色合わせのものなど、首元が悪目立ちしそうなものも避けた方が無難です。

画像2「ネクタイはコーディネートの要」出所)写真 AC HP「ネクタイを締めるフレッシュマン」
https://www.photo-ac.com/main/detail/1224218

服装(女性)

スーツ

色味はネイビーやグレー、ベージュなどの落ち着いたものがベスト。

スカートスタイル、パンツスタイルのどちらでも構いませんが、肩や身頃のサイズが合うものを選びましょう。

袖丈やスカート丈、そしてパンツ丈も自分に合ったサイズかチェックして下さい。

事務職や秘書業務などを志望するなら女性らしい雰囲気のスカートスタイルで、営業職などは快活な印象のパンツスタイルで、といったように希望職種や業界によって選んでもよいでしょう。

インナー

インナーの色は白が定番ですが、クリーム色や淡いブルーなど、スーツや自分の肌の色に合うものをセレクトしてもよいでしょう。

また、首元までボタンがある「レギュラーカラー」のシャツやブラウスは、きちんと感のある印象を与えますので金融業界など堅実な業種にも向いています。

なお、このタイプのシャツは第一ボタンまでとめるものと覚えておきましょう。

購入する際は、首回りのサイズが合うものをセレクトします。

一方、首元が開いたスキッパーカラーは快活で明るいイメージです。

ただし、襟の幅が広過ぎると、面接にそぐわない派手なイメージを与えかねないので選ぶ際は襟幅に注意しましょう。

新卒の面接ではあまり選ぶことのないカットソーですが、転職の際には応用範囲内です。

どのタイプのインナーも、清潔感があるものを選び、胸元が開いたものやフリルが目立つものは控えましょう。

「服装自由」の面接(共通)

面接で「服装自由」と言われた時も、清潔感があり、社風を考えたコーディネートを意識しましょう。

アパレル関係など比較的自由度の高い業界もありますが、やはり面接の場であることや、職種など考えたコーディネートが理想です。

クライアントとやり取りをする営業職などは会社の顔となるため、少しきちんと感を意識しましょう。

迷った時はオーソドックスなスーツを選べば間違いありません。安心して面接に臨めるでしょう。

服装共通のポイント
  • スーツは「肩」で、シャツは首でサイズをチェック。
  • 就活時代のリクルートスーツより、生地などのしっかりした印象のビジネススーツが理想ですが、リクルートスーツしかない場合もあるでしょう。

そんな時は、中に着るシャツを淡い色の付いたものにしたり、女性であればカットソーをセレクトしたりとひと工夫することで、脱就活生の印象になります。

  • シャツにはアイロンをかけておきましょう。

ここぞという時の面接であれば、クリーニングに出してもよいのではないでしょうか。キリリとプレスの効いたシャツを着ると、自信に繋がるものです。

靴・靴下(男性)

ビジネスシューズは黒か濃い茶色の靴紐タイプで、オーソドックスな革靴を選びます。

汚れは丁寧に磨き、かかとの交換も怠らないようにしましょう。

画像3 出所)写真 AC HP「かかとのケアも大切に」
https://www.photo-ac.com/main/detail/4010067
靴下

せっかくスーツと靴に配慮しても、靴下がカジュアル柄の目立つものだったりしては、トータルコーディネートが台無しです。

靴下は、座ると案外目立つものです。スーツに合わせた黒や濃紺などのダークな色味で、厚みのないものを選びましょう。ふくらはぎが隠れる長さのものがおすすめです。

靴・ストッキング(女性)

パンプス

パンプスは黒や茶色、ベージュなどのプレーンなデザインの革製のものでヒールは3〜5センチを目安とします。

ヒールの低いフラットなやエナメル素材のパンプスはカジュアルになるので、面接の日に選ぶのはやめましょう。

かかとが減っていないかチェックして、小まめにケアしましょう。

カバンは黒か茶色、ベージュなどのオーソドックスなデザインのトートバッグが主流です。

A4サイズの書類が入り、自立するものを選びましょう。

ストッキング

ストッキングは自分の肌の色に近い無地のものを選びましょう。黒をはじめ、色のついたものやタイツは避けたほうが無難です。

冬季の道中は、レッグウォーマーなどで防寒をするとよいでしょう。

また、伝線対策として予備のストッキングを持っておくと安心です。

小物類

時計

普段はスマートフォンを時計代わりにしている人も多いと思いますが、面接の場では画面を見るのをためらうシーンもあるはずです。

また、筆記試験が実施されることもありますので、やはり腕時計を用意しておくと安心です。

面接の日の時計は、シンプルなデザインでベルトは革製かシルバーなどの悪目立ちしないものを選びましょう。

ゴールドのベルトなど、面接官の目がとまるようなものは避けるのがベターです。

画素4「面接の日の時計」出所)写真AC HP「ビジネスグッズ3」
https://www.photo-ac.com/main/detail/806433
ベルトとカバン

ベルトは靴と同じ色

悪目立ちせず、面接の場にふさわしいシンプルなものを用いましょう。

面接時は、細かなところに配慮ができているかも見られています。

一見、目立たないところにも気を配りましょう。

カバンは黒やブラウンなど落ち着いた色のベーシックなデザインがベターです。

A4サイズの書類が入る大きさで、床に置ける自立式のものを選びましょう。

靴・小物類共通のポイント

どのアイテムも、ブランド名が目立つものなど、面接の場で目立つ懸念のあるものは控えたほうが良いでしょう。

靴やカバン、ベルトは本革製が理想ですが、無理して購入する必要はありません。

傷みがないベーシックなデザインのものであれば、今あるもので堂々と面接に挑みましょう。

面接で見られるのは、アイテムの質以上に本人の立ち振る舞いや表情といった、自分で努力できる点です。

髪型とメイク

男女ともに、最も大切なのは清潔感です。

前髪が目にかかっていたり、手入れ不足の髪のまま面接を受けることのないようにしましょう。

髪型(共通)

男性は、黒髪で短髪が理想のヘアスタイルで、襟足ともみあげをすっきりさせると爽やかな印象になります。

女性はサイドの髪が顔にかかると暗い印象を与えてしまうので、耳にかけたりハーフアップにするなどして明るいイメージを意識しましょう。

メイクのポイントは清潔感(女性)

面接の際はナチュラルメイクを心がけ、アイメイクは控えめに。

チークは軽くのせ、口紅も派手な印象を与えず肌に合った色を選ぶと、血色がよく表情も明るく映ります。

気をつけたいのは、ナチュラルを通り越してノーメイクで面接に挑んでしまうことです。

面接の場面で顔色が悪く映ったり、身だしなみの点でチェックされたりしては、大きなマイナス効果です。

自己PRをする場でもある面接では好感度の高いナチュラルメイクを意識しましょう。

「姿勢」と「おじぎ」も見た目の大事な要素*4

おじぎは、相手に対する敬意や感謝の気持ちなどを表し、「心を伝えること」と考えましょう。

  • 真礼/丁寧なおじぎ(45°) 

身体の前傾角度は約45度のかなり深いものです。面接の終了時に、面接官へのお礼の意味を込めて、最も丁寧なおじぎをしましょう。

  • 行礼/普通のおじぎ(30°) 

身体の前傾角度は約30度。面接官の前に立って挨拶するときはこの一礼を。

  • 草礼/会釈(15°)

身体の前傾角度は約15度。面接試験室への入室、退出時にドアの前でするおじぎです。

図5「面接時の一礼」出所)札幌学院大学「面接試験の流れ」
https://www.sgu.ac.jp/emp/portal/qa/142.143.pdf

面接時は質問者である面接官へ顔を向け、聞く時、話す時ともに相手の目を見るようにしましょう。

また、面接官が数名並んでいる時は、視線だけでなく、上半身ごと質問者に向けるようにすると好印象です。

また、面接官には視線だけでなく、心も充分に開いて明るく意欲の感じられる表情で対応しましょう。

時間の使い方

面接当日は、早目に現地に到着できるよう余裕を持って家を出ましょう。

冬季のコートは会社に入る前に脱ぐようにします。

マフラーや手袋も同様です。

会社には10分前後の余裕を持って受け付けを済ませます。

15分以上早く到着すると、先方の仕事に差し障ることがあるため、到着時間には配慮しましょう。

面接ではしゃべることより「聴く」ことが重要 *5

面接で自己アピールをすることは大切ですが、本当に重要なのは、面接担当者の質問をよく「聴く」ことなのです。

そして、質問の意図を正確に捉えて返答しますが、もし質問の意味が理解できなかったときは、適当に答えることなく「その質問は○○○○ということでよろしいでしょうか」と確認したり、「恐れ入りますが、もう一度お願いいたします」などと伝えて再度、内容を確認しましょう。

その結果、的外れな返答をすることなく、面接官も好印象を受けるでしょう。

面接終了後も、人事は見ている

面接が終わった後、社内の関係者に会釈をし、敬意を払うことはビジネスの基本であると心得ておきましょう。

また、会社の敷地から出るまでは、面接が続いていると考え、スマートフォンの操作なども会社を離れてから行いましょう。

面接はゴールではなくスタート

晴れて内定が確定し入社した後も、人事担当者の期待に沿い、信頼を得ることができるような自分でありたいものです。

そして、「この期待に応えられるよう、ここで頑張ろう」と思えれば、その面接は双方にとって大成功であったと言えるでしょう。

求職活動で身に付けたマナーは、必ず一生モノとしてあらゆるビジネスの場で役に立ち、失うことのないあなたの武器となります。

あなたのビジネスストーリーの第一幕であるこの機会に、自分のスキルアップを兼ね「面接」に挑んでみませんか?


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*1 出所)NIKKEI  STYLE「それでも転職面接は『最初5秒の印象が10割』のワケ」
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO39355180V21C18A2000000/

*2 出所)PRESIDENT Online HP「あなたの外見は、話の説得力を高めていますか?」
https://president.jp/articles/-/9681?page=1

*3 出所)国立研究開発法人  科学技術振興機構 HP「医療安全教育における人間工学的アプローチ」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jergo/48spl/0/48spl_88/_pdf/-char/en

*4 出所)崇城大学 HP「挨拶・おじぎ」
https://www.sojo-u.ac.jp/course/student/jobsearch/bow/

*5 出所)大阪ハローワークHP「面接の受け方」
https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-hellowork/list/umeda/kyusyoku/tensyokuqanda/mensetu.html


【著者】安達 結子
元国会議員の弁護士秘書を務める。
現在はビジネスマナーを主力事業のひとつとする企業に所属し、大手クライアント社員のマナー評価やアドバイスなど行う。