人材紹介業を始めようと考える中で「業界の市場規模や今後の課題について知っておきたい」と考える方は多いのではないでしょうか。
この記事では、人材紹介業を立ち上げようとしている方に向けて以下のことを解説します。
・人材紹介業界の市場規模
・人材紹介業界とその他の人材ビジネスとの比較
・人材業界の課題
人材業界が取り組むべきことも合わせて解説するので、事業を成長させるヒントを得たい方もぜひ参考にしてください。
目次
人材紹介業界の市場規模
2022年度における、人材紹介業(ホワイトカラー職種)の市場規模は3,510億円(前年度に比べ18.6%増加)です(*1)。コロナ禍の影響で停滞した経済活動を活発化させようとする社会の動向によって採用需要が高まった結果、市場規模拡大につながりました。
人材紹介事業は、IT人材やDX人材などの採用難易度が高い専門職種人材の採用に重宝されています。また、求職者と求人者をマッチングするサービスや、優秀な人材を企業側が見つけやすくするサービスなど、新しいサービスが登場しているのも特徴です。
人材紹介事業のビジネスモデルについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
*1(参考)株式会社矢野経済研究所「人材ビジネス市場に関する調査を実施(2023年)」
人材紹介業界における事業所数の推移
2022年度における人材紹介の事業所数は、29,856所と過去最高を更新しました(*1)。事業所数増加の要因として、1999年の職業安定法改正によって実質的に手数料の上限が撤廃されたことが挙げられます。
人材紹介は労働人口の減少や少子高齢化の進行によって、今後も市場が拡大する見通しです。ただし、人材紹介は世界情勢や金融危機などの景気変動の影響を受けるため、今後の市場動向を引き続き慎重に探る必要があります。
*1(参考)厚生労働省「職業紹介事業報告書」
人材紹介とその他の人材ビジネスの市場規模を比較
こちらでは、人材紹介と以下の人材ビジネスの市場規模を比較します。
・人材派遣
・再就職支援
・求人情報サービス
それぞれの人材ビジネスの特徴も紹介するので、人材業界に興味のある方は参考にしてください。
人材派遣
2022年度の人材派遣業市場は、8兆8,600億円(前年度に比べ7.6%増)です(*1)。人材紹介の市場と比べて、前年比の伸び率は低いものの、市場規模は25倍以上となります。
人材派遣とは、人材を求める会社に派遣社員を派遣して、企業・求職者をマッチングさせることです。派遣社員は派遣会社と雇用契約を結ぶので、業務は派遣先の指示で行われます。給与の支払いや福利厚生は派遣会社から行われるのも特徴です。
近年は、同一労働同一賃金の法改正によって派遣社員の賃金格差が是正されたうえに、雇用維持の動きがあったことが市場拡大を後押ししました。
*1(参考)株式会社矢野経済研究所「人材ビジネス市場に関する調査を実施(2023年)」
再就職支援
2022年度の再就職支援業市場は、245億円(前年度に比べ23.7%減)です(*1)。人材紹介の市場と比べて、市場規模は非常に小さいです。コロナ禍後の経済活動の正常化によって再就職の需要が落ち着いてきたため、成長も鈍化しています。
再就職支援とは、事業規模縮小などで企業がやむを得ず人員削減をするとき、離職者の再就職を支援するサービスです。再就職支援会社は人員削減をする会社と契約を結んで、退職者の再就職先を探します。
*1(参考)株式会社矢野経済研究所「人材ビジネス市場に関する調査を実施(2023年)」
求人情報サービス
2021年度の求人情報サービスの市場規模は、6,962億円(前年度に比べ67.8%)です(*1)。求人情報サービスは人材紹介と比較して約2倍の市場規模を誇り、前年比も3倍以上の差があります。
コロナ禍で一時的に求人数が減少しましたが、その後回復したため、前年度比の伸びが顕著に出ました。コロナ禍後の経済活動の正常化によって、さらに求人が増えることが予想されるため、これからも規模は拡大すると予想されます。
求人情報サービスは企業の求人情報をWebサイトや雑誌などのメディアに掲載して、求職者を集客するのが特徴です。新卒採用から転職、派遣、アルバイトまでさまざまな募集に使われます。
*1(参考)公益社団法人全国求人情報協会「求人情報提供サービス市場規模調査結果および求人広告掲載件数等集計結果(2023年)」
人材業界の短期的な課題
コロナ禍を経て、人材業界は大きく変化しました。
ここでは、コロナ後の人材業界に大きな影響を及ぼすと予想される「雇用形態の変化への対応」と「DX化への対応」についての課題を解説します。
これから人材業界に参入したい方や、近い未来を見越して対策を練りたい方は参考にしてください。
雇用形態の変化への対応
コロナ禍では、正社員の有効求人倍率が急落して市場の混乱を招きました。
2023年現在は、有効求人倍率がコロナ禍前の水準まで回復しています(*1)。ただし、正社員採用の需要がこれからどこまで増加するかは不確実です。
非正規雇用の人材派遣業の需要が大きく拡大したことから、これから需要が増える雇用形態に注目する必要があります。
*1(参考)厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年9月分)について」
DX化への対応
DX化とはデータとデジタル技術を駆使して、サービスやビジネスモデル、業務そのものを刷新することです。
さまざまな業種の企業との結びつきがある人材業界だからこそ、DX化の取り組みは今後ますます重要になることが予想されます。
人材業界では、以下のようなDX化が推奨されています。
・顧客管理の効率化
・人材データの管理・活用
・オンラインサービスの充実
・電子契約・ペーパーレス化の導入
人材業界では、DX化を積極的に導入することが成長の鍵を握ります。
ただし、デジタル人材や資金の拡充、既存システムとの計画的な入れ替えなど、DX化にはさまざまな障壁があることを知っておきましょう。
人材業界の中期的な課題
少子高齢化による労働人口の減少が、人材業界の大きな課題になることは間違いありません。ほかにも、外国人の労働力やAIの活用などに関する課題をクリアする必要があります。
ここでは、人材業界が抱える以下の課題について解説します。
・グローバル人材育成への注力
・AIがもたらす時代変化への適応
・高齢者の就労への対処
・若い労働力の減少
長期的に人材サービスを発展させていきたいとお考えの方は、参考にしてください。
グローバル人材育成への注力
国内における経済成長の停滞や人口減少の影響を受け、各企業の海外進出が進んでいます。それに伴い、グローバルに活躍できる人材の需要が高まっています。
海外需要に対応するためにも、人材業界ではグローバル志向の強い求職者を集める取り組みが必要です。また、グローバル人材の育成に力を入れ、世界での市場拡大で必要になる語学力や交渉力を身につけてもらうことも求められます。
AIがもたらす時代変化への適応
近年はIT技術の進歩によって、さまざまな仕事にAI技術が活用されるようになりました。
今後は事務職のデータ入力や在庫管理などの業務がAIによって簡略化されることで、人の需要が減少していくことも予想されます。その後は、AIに代替されない専門的な職種への需要が高まると予想されるため、今のうちから自社の将来的な方向性を検討しておくのがよいでしょう。
高齢者の就労への対処
今後は高齢者層が老後資金の不足を理由に、定年後も仕事をして収入を得たいという要望が多くなることが予想されます。そのため企業は、高齢者層の労働力の活用法を検討する必要があります。
人材業界においては、高齢者のスキルや経験をどう評価して、どのような仕事に活かしてもらうかマニュアルを設定しておくことが重要になるでしょう。
若い労働力の減少への対処
少子高齢化の影響で、今後は若い労働力が減少すると予想されます。
現在の企業の採用傾向から考えると、現在は将来性や職場への適応力を重視するために若年層が好まれています。しかし今後は、スキルや経験のある中年層の雇用体制を整えることが求められるでしょう。
人材業界においては、若い労働力の減少を前提として、各企業がどんな人材を求めるのかを考える必要があります。
市場規模の拡大を踏まえ人材業界が取り組むべきこと
人材業界は市場規模が拡大する一方、雇用の仕組みや労働環境などの変化に合わせた対応も求められています。
ここでは、そんな人材業界で事業を継続していくために取り組むべき「オンライン化への対応」と「終身雇用の崩壊への対応」の2つを解説します。
オンライン化への対応
生産性や効率性の向上、コスト削減などの理由で、さまざまな企業が人と人のコミュニケーションにおいてオンライン化を進めています。
人材業界は人と人をつなぎ合わせる仕事であるため、オンライン化の需要は高いと考えられます。具体的には、オンライン上での求職者との面談ややり取りなどです。実際、オンラインのみで完結する就職・転職支援サービスも増えています。
企業や求職者の中には、対面での会話との違いに戸惑う方もいると考えられます。人材業界は、企業・求職者の双方に適切なサポートやアドバイスができるようにノウハウや知識を蓄積させておくことが大切です。
終身雇用崩壊への対応
2019年に経団連会長が「終身雇用はもう守れない」と発言したことが話題を呼びました。
今後はスキルアップを求める人材が増え、人材関連のサービスの需要が高まることが予想されます。結果的に、人材業界には追い風となるでしょう。
人材関連のサービスの需要が高まることに乗じて、以下のようにさまざまな策を講じる必要があります。
・今まで以上に求人数を拡充させる
・キャリア支援サービスを充実させる
・求職者に対する正当な人事評価制度を設ける
など
人材関連のサービスの需要をさらに高められるように、企業や求職者にどのようなニーズがあるか常に考え、具体的なアイデアに落とし込むことが大切です。
人材紹介の市場規模は今後も拡大される見込み
この記事では以下のことを解説しました。
・人材紹介業界の市場規模
・人材紹介業界とその他の人材ビジネスとの比較
・人材業界の課題
統計データから考えて、人材紹介の市場規模は今後も拡大されると予想できます。
ただし、AI技術の進歩や日本の景気状況など、さまざまな要因を考慮したうえで適切な対応をとる必要があります。
時代の動向を先読みして、状況の変化に対応できる持続可能な事業を育てましょう。
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