【経営者必見】人材紹介会社のインセンティブ制度を設計するには?

人材紹介会社の経営者にとって、社員のモチベーション維持は大きな関心事の1つかと思います。社員のモチベーションアップによく用いられる施策の一つとしてインセンティブ制度が挙げられます。

インセンティブ制度は社員のモチベーションアップに効果的な半面、設計を誤るとかえって逆効果になってしまう危険性も持っています。

今回はインセンティブ制度の特徴と種類、メリット、注意点について詳しく解説します。社員のモチベーション維持や給与形態にお悩みの経営者の方は是非ご参照ください。

人材紹介会社の給与形態は2パターン

人材紹介会社の給与制度は、大きく分けて「固定給ベースの給与」と「インセンティブ重視の給与」の2パターンがあります。以下で、それぞれの特徴と違いについて解説していきます。

固定給ベース

固定給ベースでは、従業員の給料は時間や役職に応じて定められ、成果や業績には直接影響されません。従業員は企業の業績に関わらず固定された基本給を受け取ることができるため、安定した収入が保証されます。

給料形態として固定給ベースを採用している人材紹介会社は大手に多いです。大手の人材紹介会社では、多くの場合CAとRA、マーケターなどを分けた分業体制でビジネスを回しています。分業体制により個人が協力して会社全体の利益を追及していくビジネスモデルであるため、個人の成果をもとにしたインセンティブベースよりも時間や役職に応じて定められる固定給ベースの方が給料形態として適していると言えます。

インセンティブベース

インセンティブベースでは従業員の報酬は、達成した成果や業績に応じて変動します。通常は、目標達成率や生産性、売上高などの指標に基づいて報酬が計算されます。社員は自身の成果に応じて報酬を受け取ることができるため、成果に向けて積極的に働くモチベーションとなります。一方で社員の報酬が成果に応じて変動するため、不確実性やリスクも存在します。目標達成が困難な場合や市場の変動によっては、報酬が低下する可能性があります。

給料形態としてインセンティブベースを採用している人材紹介会社は中小企業に多いです。中小企業では、CAとRAを1人の担当者が一気通貫で担当していることが多く、1案件に対する個人の裁量も大手に比べて大きいです。このような場合、個人の成果に応じた報酬の増減は公平な評価に繋がりますし、社員のモチベーションアップも期待できます。

人材紹介会社のインセンティブの種類

物質的インセンティブ

物質的インセンティブは、主に金銭や物品といった物質的な利益を提供することで、社員のモチベーションを高める仕組みです。具体的な例として報奨金、ストックオプション、物品の支給などが挙げられます。インセンティブの中でも最も一般的で数多くの企業で導入されているインセンティブです。

評価的インセンティブ

評価的インセンティブは社内で表彰を行ったり、成果に見合った評価をしっかりと行うことで、社員のモチベーションを高める仕組みです。

会社や上司から適切な評価を受けることで、会社への信頼感や、仕事へのやる気が向上します。ただし、評価的インセンティブによるモチベーションアップは一時的なものとなりやすいため、継続的に取り組みを行い、モチベーションの持続を促す必要があります。

人的インセンティブ

人的インセンティブは職場の上司や先輩、同僚などとの人間関係の構築を通じて、社員のモチベーションを高める仕組みです。

社員同士の良好な人間関係を構築することで「自分だけでなく、一緒に働く仲間のために頑張ろう」という仕事への動機づけを生むことができます。

社員同士の交流を深めるために社内イベントを開催したり、社員同士でランチを食べる場合、昼食代を会社側で負担するといった取り組みが具体例として挙げられます。

理念的インセンティブ

理念的インセンティブは企業理念や価値観を社員と共有し、仕事の目的や意義を理解してもらうことで、社員のモチベーションを高める仕組みです。

業務を任せる際にも、ただ任せるだけでなく、その業務の目的と意義をしっかりと伝えることで、社員のやりがいに繋がり、モチベーションがアップします。

自己実現的インセンティブ

自己実現的インセンティブは社員にやりがいを感じる重要な仕事を任せ、その遂行を通じて社員のモチベーションを高める仕組みです。

自己実現的インセンティブで重要となるのは「達成感」です。社員に重要な仕事を責任を持ってやり切らせることで、社員の達成感を促し、モチベーションアップを図ります。

物質的インセンティブの導入事例

インセンティブポイント制度

・株式会社北の達人コーポレーション

株式会社北の達人コーポレーションでは福利厚生の一環としてインセンティブポイント制度を取り入れています。インセンティブポイント制度は全従業員を対象に付与基準に応じてインセンティブポイントを支給する制度で、貯まったポイントに応じて様々な商品と交換することができます。ポイントに関する社内企画などもあり、人的インセンティブという面でも従業員のモチベーションアップに繋がっています。
社内制度 | 北の達人コーポレーション採用情報サイト

ストックオプション制度

株式会社メルカリでは、インセンティブ制度として、ストックオプションを支給しています。ストックオプションで取得した自社株式の価値は会社の成長や、企業価値の向上によって上昇します。そのため、社員には自身が頑張ることによって事業を成長させ、企業価値を向上させようというモチベーションが生まれます。またメルカリがストックオプションとして支給しているのは譲渡制限株式ユニット(または事後交付型譲渡制限付株式)と呼ばれる株式で、一定の勤務期間を経なければ取得することができません。そのため、権利の付与後もすぐに株式を売却されることがなく、継続して社員のモチベーションを保つことが可能です。
ベネフィット | 採用情報 株式会社メルカリ

給与インセンティブ制度

株式会社日本生命では、インセンティブ制度として報奨金の支給を行っています。保険の販売数だけでなく、担当する顧客数や契約の継続状況、サポートの実施状況など、多角的な視点で公平な評価がなされています。売上に直結する保険の販売数だけでなく、販売に関わる手続きや顧客へのサポートも評価基準に含まれているため、社員の納得感も得られやすくモチベーションアップの施策として効果的です。
充実した給与制度 | 日本生命保険相互会社

インセンティブ制度の設計方法

導入目的を明確にする

制度の目的を明確にし、何を達成したいのかを定義します。例えば、売上増加、生産性向上、顧客満足度の向上などが考えられます。

制度の対象者を決める

インセンティブ制度の対象者を決めましょう。インセンティブ制度は公平である必要があります。同じ職種、業務内容、目標を持つ従業員には同じ条件でインセンティブが提供されることが重要です。

付与条件を設定する

付与条件となる適切な指標(KPI)を選択します。例えば、売上目標の場合は売上高、新規顧客獲得数、顧客維持率などが考えられます。付与条件を設定する場合は会社の業績や市場の動向を予測した上で、実現可能な条件設定を行いましょう。あまりにも高すぎる、あるいは低すぎる付与条件はかえって社員のモチベーションを下げてしまいます。

インセンティブ(報酬)の内容を決める

インセンティブは、金銭的報酬、昇給、ボーナス、ストックオプション、表彰、特典など様々な形式があります。社員のモチベーションや関与度を考慮し、適切な形式を選択します。

運用フローを定める

制度の内容が決まったら、いきなり本格的に導入するのではなく、期間を決めて試験的に運用をしてみましょう。試験的な運用を通じて、制度の問題点や改善点を見つけることが大切です。

また、運用を行う際にはインセンティブ制度に関する情報を社員に適切に共有することも重要です。制度の詳細や目標達成状況、インセンティブの算出方法などは社員に明確に伝えましょう。

制度の実施後はインセンティブ制度の効果をモニタリングし、定期的に評価しましょう。制度の改善点や課題を特定し、適切な修正を行います。評価制度が公平か、付与条件が誤っていないかは実際にインセンティブの対象者である社員からのフィードバックを取集することが効果的です。従業員がインセンティブ制度について意見を述べる場を提供し、改善に取り組みましょう。

インセンティブ制度を運用する際の注意点

競争激化によって組織風土や結束力が悪化する可能性がある

インセンティブ制度が競争を助長しすぎると、チームワークや協力関係を損なう可能性があります。社員が個々の利益のみを追求することで、組織全体の目標から逸脱する可能性があります。インセンティブ制度を導入する際は、競争を促進する一方で、協力と共有を奨励する仕組みを導入することが重要です。

目の前の成果に固執し、視野が狭くなりやすい

インセンティブ制度はしばしば即時の成果に焦点を当てる傾向があります。これにより、従業員は短期的な目標にのみ注力し、長期的な戦略や成長に対する視野が狭くなる可能性があります。経営陣は、バランスの取れた目標設定を行い、長期的な成果にも焦点を当てることが重要です。

成果を求める過程で心理的なプレッシャーがかかりやすい

インセンティブ制度は成果を重視し、固定給ベースに比べて不安定な給与形態であるため、社員は業務に対するプレッシャーを感じやすくなります。適度なプレッシャーは業務に良い影響を及ぼしますが、それがあまりにも大きくなると、ストレスや不満を引き起こし、業務に悪影響を及ぼす可能性があります。インセンティブ制度を導入する際は、給料に占めるインセンティブの割合を大きくしすぎず、社員に過剰な負荷をかけることがないよう心がけましょう。

一部の人しか享受できない設計で、従業員のモチベーションが下がる

インセンティブ制度が一部の社員にのみ利益をもたらすような設計の場合、他の社員のモチベーションが低下する可能性があります。インセンティブの設計は公平性を重視し、全ての社員が公正に評価され、報酬を受け取る機会を持てるように注意しましょう。

単純な金銭的インセンティブだけでは限界がある

金銭的インセンティブはモチベーションを高める一方で、社員の満足度や会社への信頼を得るのには不十分です。社員は金銭面だけでなく、仕事に意味ややりがいを見出し、成長や自己実現を追求できる環境も求めます。したがって、インセンティブ制度は金銭的な要素だけでなく、仕事の内容や文化、個人の成長にも焦点を当てる必要があります。

まとめ

今回はインセンティブ制度の特徴と種類、メリット、注意点について解説しました。インセンティブ制度は社員のモチベーションアップに効果的な施策ですが、充分な効果を得るためには適切な制度設計が重要です。

また、社員の長期的なモチベーション維持のためには金銭以外のインセンティブも必要となります。様々なインセンティブをうまく活用して、効果の出る制度設計を目指しましょう。


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