理論年収の算出方法とは?人材紹介業における手数料との関係も解説

人材紹介業の主たる収益源となる紹介手数料は、多くの場合、「理論年収」をもとに算出されます。しかし、「求人票に理論年収が直接記載されていない場合、どうやって算出すればいいの?」「理論年収の内訳はどうなっているの?」このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

本記事では、人材紹介業を営む方向けに、以下の内容をまとめています。

・理論年収と紹介手数料の関係
・理論年収の算出方法
・人材紹介業にて理論年収を取り扱う際の注意点

理論年収を適切に取り扱い、より安定的に事業を展開するための一助となれば幸いです。

そもそも理論年収とは 

年度初めから年度末までの1年間に、雇用者から被雇用者に対して支給される見込みの収入を「理論年収」と呼びます。

採用された場合に得られる年収の「目安」や「モデルケース」のような位置付けで、求人段階で提示される年収です。求人票によっては「想定年収」と表記されている場合もあります。

年俸制求人の場合は、求人票で提示された年俸額が理論年収に相当します。年俸制ではない求人の場合は、後述する方法で理論年収の推定が可能です。毎月の給与や賞与(ボーナス)、諸手当の額などから採用後の年収を算出できるのです。

ただし、理論年収と実年収が必ずしも同額となるわけではありません。とくに採用後の「手取り年収」は、理論年収の額よりも減額されます。その理由については、後ほど詳しく解説します。

人材紹介業における理論年収と紹介手数料の関係 

人材紹介業において理論年収は重要な意味を持ちます。顧客(求人元の企業)から受け取る「紹介手数料」の額に関係するためです。

人材紹介業の主たる収益は、マッチングが成立した際に顧客(求人元の企業)から受け取る紹介手数料で成り立っており、受け取れる手数料の種類や金額の上限は「職業安定法」で定められています。

紹介手数料は多くの場合「(斡旋した人材が採用された場合)採用者の理論年収 × 手数料率」で決定されます。つまり、求人元が提示する理論年収の額によって紹介手数料の額が変動するのです。

料率設定はサービスごとに異なりますが、「採用者の理論年収の3割程度」が手数料収益の目安となります。そのため人材紹介業においては、取り扱う求人の理論年収を正確に把握することが肝要です。

人材紹介事業のビジネスモデルについては、以下の記事にてより詳しく解説しています。本記事と合わせて参考にしてください。

理論年収の算出方法 

理論年収が重要な意味を持つことは前述の通りですが、取り扱う求人によっては、理論年収が明記されていないケースもあります。

求人票に理論年収が明示されていない場合、以下の計算式で試算可能です。

理論年収 =(基本給 + 諸手当)× 12ヶ月 + 基本給(または賞与算定基準額) × 賞与支給月数

例えば、求人票に「基本給20万円・諸手当5万円・賞与支給月数5ヶ月」と記載されている場合の理論年収は(20万円 + 5万円)× 12ヶ月 + 20万円 × 5ヶ月 = 400万円と試算されます。

ただし、あくまで試算ですので、試算後に求人元の企業との間に認識齟齬がないかどうかを必ず確認しましょう。

また理論年収には税金分が含まれており、源泉徴収によって所得税や社会保険料などが別途差し引かれる点に注意が必要です。つまり、採用者の「手取り額」は、理論年収から数十パーセントほど減額されます。この点に関しては、職を斡旋する人(求職者側)への説明が必要です。

なお「諸手当」には理論年収に含まれる項目と含まれない項目があります。次の章で詳しく見ていきましょう。

理論年収に含まれる項目・含まれない項目 

一般的に理論年収に含まれる項目・含まれない項目を表にまとめました。理論年収を試算する際の参考にしてください。

支給項目理論年収に含まれるか   備考
基本賃金(基本給)試用期間終了後の賃金をベースに算出
賞与(ボーナス)「賞与算定基準額 × 賞与支給月数」で算出
成果報酬(インセンティブ)   x入社後の実績に応じて金額が変動するため、原則として含まれない
住宅手当
残業手当残業時間数や実績等に応じて金額が変動する場合は含まれない
通勤手当(交通費)x税務処理上では非課税となるため、含まれない
出張手当x出張回数により金額が変動するため、含まれない
家族手当
資格手当

「求人票に記載があり、かつ所得税・住民税の課税対象となる項目」については、基本的に理論年収に含まれると考えて差し支えないでしょう。判断に迷うケースがあれば、求人企業に確認することをおすすめします。

人材紹介業にて理論年収を取り扱う際の注意点

人材紹介業にて理論年収を取り扱う際、以下の2点に注意してください。

  • 求人先との認識をすり合わせる
  • 求職者に情報を過不足なく伝える

それぞれ解説します。

求人先と認識をすり合わせる

求人元の企業と、理論年収および自社の手数料規定について十分にすり合わせをする必要があります。

理論年収の認識に齟齬があると、顧客(求人元)から「思っていたよりも多額の手数料を取られた」「手数料設定に納得がいかない」などのクレームにつながる可能性があるためです。最悪の場合、顧客離れにつながったり、手数料が支払われなかったりするリスクもあります。

このようなトラブルを防ぐためには、手数料規定や支払いタイミング、採用された人材が早期退職した場合の返金規定等の細則について、「人材紹介基本契約書」で明確化しておくことが大切です。

人材紹介基本契約書とは、人材紹介事業者と人材を探している企業の間で取り交わされる契約を指します。基本契約書の雛型や使い方については、以下の記事にて詳しく解説しています。

求職者に情報を過不足なく伝える

求職者に対し、求人元の企業から提示された理論年収の内訳や手取り額との違いを過不足なく説明する必要があります。

説明が不十分だと「理論年収と実年収が違いすぎる」「エージェントから聞かされていた話と実情がかなり違った」などのクレームにつながりかねません。

特に理論年収と手取り額の違いに関しては、丁寧に説明する必要があるでしょう。前述の通り、理論年収の額から源泉徴収によって税金が差し引かれるため、採用者の手取り額は理論年収よりも数十パーセント少なくなるためです。

求職者から理論年収に関する問い合わせがあった場合、できる限り誠実でわかりやすい情報提供に努めましょう。

(記事のまとめ)理論年収の算出は適切に実施しよう

今回は人材紹介業に携わる方向けに、理論年収の算出方法や注意点について解説しました。

理論年収は求職者と求人者を仲介する人材紹介事業者にとっても重要な意味を持ちます。多くの場合、理論年収が人材紹介手数料の金額に直結するため、正確な見積もりが必須です。

理論年収に関する認識のずれがトラブルに発展するケースも多々あるので、求職者や求人企業とのコミュニケーションを大切にしながら事業を進めましょう。


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