人材紹介の業務委託は違法の可能性あり!違法にならないケースも紹介

「自分の業務に集中したい」「コストを抑えたい」などの理由で、人材紹介を業務委託したいと考える方もいらっしゃると思います。

しかし、人材紹介の業務委託は違法となる可能性があるため、安易に選択すべきではありません。

本記事では、以下のことを解説します。

  • 人材紹介の業務委託が違法になる理由
  • 人材紹介の業務委託に需要がある理由

さらに人材紹介の業務委託に該当しない(違法にならない)ケースもご紹介するので、人材紹介業をされている方や集客にお悩みの方は参考にしてください。

人材紹介の業務委託が違法になる理由

人材紹介の業務委託が違法である理由として、以下のことが挙げられます。

  • 無免許での人材紹介が禁止されているため
  • 名義貸しが禁止されているため
  • 中間搾取にあたるため

それぞれ詳しく解説するので、人材紹介の業務委託について知りたい方は参考にしてください。

無免許での人材紹介が禁止されているため

職業安定法第30条には、以下の条文があります。

「有料の職業紹介事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。」(*1)

免許は原則として事業所ごとに取得されるため、雇用契約を結んでいる自社の社員が人材紹介に携わるのは問題ありません。しかし、業務委託の場合は雇用契約が結ばれていないことになります。

雇用契約を結んでいない人間が人材紹介業務をしていることになれば、無免許の扱いになります。違反を犯した場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が課されるケースがあることを覚えておきましょう。

人材紹介業の免許については以下の記事で解説しているので、参考にしてください。

*1(参考)厚生労働省「職業安定法

名義貸しが禁止されているため

職業安定法の第32条の10には、以下の条文があります。

「有料職業紹介事業者は、自己の名義をもって、他人に有料の職業紹介事業を行わせてはならない。」(*1)

上記の条文は人材紹介において、いわゆる「名義貸し」を禁止するものです。名義貸しとは、他人が契約や申請などで自分の名を使用することを許容することです。

人材紹介において業務委託先に自社の名義を使わせてしまうことは、違法になるといえます。

*1(参考)厚生労働省「職業安定法

中間搾取にあたるため

労働基準法第6条には、中間搾取の排除について以下の条文が記載されています。

「何人も、法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。」(*1)

この条文から、第三者が他人の就業に介入して利益を得ると違法になるといえます。人材紹介業務を外部の事業者に委託する場合、「他人の就業に介入」に該当する可能性があります。

なお、「業として」とは「反復継続すること」と法律上は解釈されます。ただし、1回だけの行為でも反復継続の意思がある場合は、事業性があると判断されて違法と判断される可能性が高まることを知っておきましょう。

*1(参考)厚生労働省「労働基準法

人材紹介の定義

人材紹介とは採用企業と求職者の仲介役として、雇用関係の成立をあっせんする仕事のことです(*1)。採用企業と求職者が雇用契約を結んで、入社が決定した段階で紹介手数料が発生します。

よくあるビジネスモデルとして、キャリアコンサルタントが職業を探している人に希望の職種や条件をヒアリングし、その人に合った企業を紹介する方式があります。採用に至るまで、応募書類の添削や模擬面接などのサポートをしてくれるサービスもあります。

なお、人材派遣サービスは人材紹介に定義されません。人材紹介の場合はあくまでも雇用関係の成立があっせんの目的であって、労働者の派遣とは法律上の位置づけが異なることを覚えておきましょう。

*1(参考)厚生労働省「職業安定法

業務委託の定義

業務委託とは、企業が業務の一部を外部の事業者に委託することを指します。

業務委託では、個人や法人は企業と「業務委託契約」を結んで仕事を受注します。業務委託契約には雇用関係がなく、委託側と受託側が対等な立場にあるのも特徴の1つです。

業務委託は法律で明確に定義はされていませんが、民法632条「請負契約」や643条「委任契約」(1)、656条「準委任契約」(2)に関連項目が記載されています。

*1(参考)国土交通省「請負契約とその規律
*2(参考)法務省「民法(債権関係)の改正に関する検討事項(12) 詳細版

人材紹介の業務委託に需要がある理由

人材紹介の業務委託には違法性があるため、安易に選択すべきではありません。

それでも、人材紹介の業務委託に需要がある理由には、発注側と受注側の双方にメリットがあることが挙げられます。

人材紹介の業務委託に需要がある理由について、詳しく見ていきましょう。

発注する側にメリットがあるため

人材紹介を業務委託として発注するメリットは以下の通りです。

  • 人材紹介をする社員の教育コストがかからない
  • 社員を増やす必要がなく人件費を削減できる
  • 歩合制契約なので固定費を抑えられる
  • 社員が自分の仕事に集中できる

総じて、コスト面やリソース面のメリットが大きいといえます。ただし、繰り返しとなりますが、違法性を問われる可能性を鑑みると、メリットだけを見て安易に選択すべきではありません。

受注する側にメリットがあるため

人材紹介の仕事を業務委託で受注するメリットは以下の通りです。

  • 歩合制のため自分の実力が給与に反映される
  • 会社との雇用関係がないので自由に働ける

多様な働き方が浸透してきた昨今、会社に縛られず自由に働きたいという人材が増えています(*1)。人材紹介に限らず、「業務委託で仕事を受注したい」という需要は今後も増えていく可能性があります。

*1(参考)ランサーズ「新・フリーランス実態調査 2021-2022年版

人材紹介の業務委託に該当しない(違法にならない)ケース

以下のケースの場合、人材紹介の業務委託には該当しないため、違法とはなりません。

  • 労働契約の成立に直接関与しない部分の業務委託
  • フリーランスや副業の人材紹介

それぞれ詳しく解説します。

労働契約の成立に直接関与しない部分の業務委託

「人材を獲得する」という目的で業務委託を活用しても、以下の行為であれば、違法とはなりません。

  • 業務委託先が自ら求人または求職を受理せず、求人または求職の申し込みを勧誘すること
  • 業務委託先が求人申込みの意向を持つ求人者がある旨の情報提供を行うこと

リソース不足で外注化を検討している場合は、上に記載した部分のみを業務委託するのがおすすめです。

フリーランスや副業の人材紹介

フリーランスや副業は雇用契約に該当しません。そのため、業務委託先が企業にフリーランスや副業の人材を紹介しても違法になりません。

ただし、フリーランスや副業が名ばかりで、実際は社員と同じような労働になっている場合、違法性が疑われる可能性は0ではないことを覚えておきましょう。

人材紹介に業務委託を活用したい場合は前もって労働局に相談するのもおすすめ

人材紹介を無許可の事業者に業務委託することは、法律違反にあたります。ただし、

法律違反があったとしても、必ず摘発されるということでもありません。

そのためどの範囲が合法で、どこからが違法なのか判断が難しい場合があります。とはいえ、社内では人材紹介に人員を割けないせいで業務が滞ってしまうケースや、採用担当の社員を育てるために多くのコストがかかってしまうケースもあるでしょう。

人材紹介業務に関して困ったことがある場合は、事前に労働局に相談するのも1つの手です。労働局に前もって相談すれば、自社で行おうとしている取り組みがどこまで合法で、どこから違法なのかを明確にできるためおすすめです。

(記事のまとめ)人材紹介の業務委託は安易に選択しないように

この記事では以下のことを解説しました。

  • 人材紹介の業務委託が違法になる理由
  • 人材紹介の業務委託に需要がある理由
  • 人材紹介の業務委託に該当しない(違法にならない)ケース

人材紹介の業務委託は、安易に選択すると違法となる可能性があります。事業を進める中で分からないことがあった場合は、法の専門家や公的機関に前もって相談するようにしましょう。

効率的な集客にお悩みの場合には、業務委託とは別の方法で人材紹介業務を効率化するのも1つの手です。


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【監修者】川口 真輝
弁護士法人Authense法律事務所

第二東京弁護士会所属。中央大学法学部法律学科卒業、中央大学法科大学院修了。
訴訟対応の経験が豊富で、学校法人が関係する大型訴訟や企業の役員の解任に関する紛争処理、融資一体型変額保険において保険会社の責任を追及した事例など、様々な訴訟紛争を解決へと導いた実績を有する。経営者とともにビジョンを描き、課題解決へと導くことを信条としており、自ら多数の金融機関関係者、経営者、士業が参画するコンサルティンググループも形成し運営している。


HP:https://www.authense.jp/